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スマート・スマート(1)



 今日のテーマも詩です。が、小さな物語としても読めますので、これぞ(以前もこの場で語らせてもらいましたが)私の提唱している薫葉式ショートショート。
 名付けて「スマートスマート」と形容してもよいかもしれません。
 それでは「スマート・スマート」劇場の幕開けです。



題「詩人の翼」


 滑走路から上昇するプロペラ機のキャノピーで、
 魔笛のような振動に身を揺らしながら、
 羽ばたきの角度を、
 左四十五度に下げる。

 フラップ・ダウン。

 半ロールしつつ、
 森林の上を八の字で踊りながら駆け抜けていく。
 軽やかなダンシング。

 足を持たない機体で行なう幻覚下でのステップが、
 振動からファントムを呼び起こし、
 旋回の度に、気分と高度計をハイ・テンションへと誘っていく。

 水平へと機首を戻し、一気にフル・スロットル。
 人生で三番目ぐらいに、エキゾチックでファンタスティックな喜ばしき瞬間だ。

 目の前にピアノがあるなら、モーツアルトの未完の大曲「レクイエム」でも奏でてみたい。
 そう、この空の彼方へと、命を繋げるために。

 雲と森との間にサンドイッチされた、このこそばゆくてじれったいような中途半端な航路をひたすら進行。

 右斜め下部に見えた一軒の赤色の屋根に意識をムーブメント。
 翼よ、あれこそが、眠れる森の美女の家だ。

 舵を切り、左右にロールしながら空中に詩を綴る。
 蒼く、それでいて埃まみれのキャンバスへと。
 癖のある両翼から零れるアルペジオの旋律。

 空中に広がる蒼いキャンバスに、
 白い印がメロディの如く流れ出す、溢れ出す。
 まるで、Eセブンスのコードのように、
 優しくて甘い響き。

 羽根の瞬き。空に奏でた一編の詩を僕は書き終わった。(飛行機雲にて綴った詩を)

 「Good morning. The royal princess!」

 そう、それこそが、眠れる森の美女を眠りから呼び覚ます力を持つ(と『時の委員会』によって)判断された、しかも、千年の時を経て思案。生み出された呪文だ。
 後は、運を天に任せることにしよう。
 僕は十字を切って、機体を旋回。
 太陽の輝く方向。僕の町へと針路を取った。

詩(13)



題「闇からの再生」


 俺は偽善の中で良心を育てた。
 闇の中で静かに研ぐ、牙の光りを見つめながら。

 俺は、錆びれた街の排気ガスに抱かれながら、育てられた。

 震える肩を抱いてくれる、誰かの温かな指先の体温さえも知らぬまま。

 凍てついた夜が、若者達の目を研ぎ澄まさせていき、

 冷たい風が、容赦なく俺を、射抜いていく。

 狂えないクールさに髪の毛をかきむしり、
 どうでもいいような鼻歌を口ずさむ日々。

 曖昧な感覚が、すべての力学をねじ曲げていき、
 出口なき道の途上で、俺は、
 自分のこの掌を、
 ただ、
 じっと見つめているだけ。


 白い道の向こう側に、幾つもの白い家が立ち並ぶ。

 その家に住む術も知らず、心の中に、ただ風が吹いている。

 偽善に咲いた花として、何かを書き、
 腐った心を鏡に映しては、
 反射するものの威圧に、
 今震えている。

 それでも、まだ捨てきれぬもの、
 そのすべてに孕む尊さに対し、
 手を伸ばしてみる。

 いつからか、
 そんな風に生きていた自分がいた。


 目の前に列車が走っている。
 過ぎ去ったものを全て積んでいる
 列車が。

 そして、新しい荷物を生み出すために、
 次に来る電車を、
 一人
 ここで待っている。

 もう一度、踏み出すための第一歩を落とす、
 穢れ無き大地へと、静かに立つために。

 何故、時は、こうもいとも容易く、
 人を変えてしまうのだろう。

 一度、上手くいきかけたものさえ、
 たった一度の過ちで、
 容易く壊れてしまった。

 何もかもが終わり、
 何故か、一番わからない自分という脂肪機械に、
 どこか遠くにいる自分の魂が、振り回されている?

 何故、あの時自分は立ち止まり、
 積み上げた石を
 途中で
 投げ出してしまったのだろう?

 あぁ、わからない。
 この心。
 だからこそ、そのわからないものの姿に、今、向き合おう。

 もう一度。

詩(12)



題「メフィストの森」


 逆のものを確認するために、メフィストの森へと足を踏み入れる。
 振り子の両方を把握して、全貌を見てみたい。

 空を見上げよう、唇の赴くまま。

 そして、次第に木々は揺れ始める。

 その音を琴にしながら、歌を口ずさむ。

 体の震えに正直に、
 模索によって、立つ位置を覚えてみよう。

 自分は自分。

 だから、自らが風を吹かすしかない。
 横笛を吹きながら、幻のメロディを。

 俯瞰しよう。
 問題をクリアにするために。

 そして、本質を探すために、
 両極を覗きに、出かけるとしよう!

 シミュレーション・ゲーム上での、シミュレーションではなく、

 自分の描いた地図の上での、

 シミュレーションを行うために!

詩(11)



題「筆灯持つランナー」


 物書きは皆、運動選手。書き続けるランナー。

 最初から最後まで、バトンは自分自身が握り続ける孤独なランナー。

 上り道も坂道も、どんな道でも走り続ける。

 時には雨が、時には風が。

 時には喜びが。

 靴が古びたら、変えればいいさ。

 そして、走ることの中に人生を見出す。

 走るリズムをつかみ、上手く走るコツを考える。

 道の終わりは考える必要はない。

 色々なドラマが日常にあるように、マラソンも同じ、人間ドラマ。

 二つの線を交えれば、いい顔をして走れるさ、

 きっと。

閲覧者さま


皆様へ


 司先生が、「お引っ越し」と表記されていますが。決してこのブログが無くなってしまうわけではありませんので、ご安心下さい。

 実は私はこのブログの管理を任された際、司先生の方から、今、アメーバに勢いがありますし、今後ブログ賞の受賞作を集めて出版企画を練っていく際に、このブログには大きなチャンスが潜んでいるのではというような旨をお聞きしまして。それではと引き受けさせてもらいました。

 そこで何をやろう。自分のサイト(ニュー・ダニット館)で綴るような日記を綴っても仕方ない?など、色々と考えまして、まずはミステリ・ブログだけに、ミステリ論を書かせていただきました。(司先生からは内容を一任されていましたが、まずはミステリと銘打つだけのものを見せねばと意気込み!)

 初めに、「推理小説の扉」という私の自己紹介混じりのお話を。そして、次に「薫葉豊輝の推理小説論」と題したエッセーを!(全5回)

 次に。では、薫葉豊輝の作品はどうなんだと言われる声も聞こえてきたので。

 連載小説「線路へと散った黒い華」を書かせてもらいました。
 この作品はアメバ自体が、流行をリードする出版を念頭にされているという先読みをしまして、流行の韓流の要素を盛り込んで、執筆いたしました。
 しかし、自身でもJ様の悦に入ってしまいまして、なかなかよいラストを演出できたのではないかと、我が子可愛さ状態に入っております。

 さて。続けて連載も芸がありません。そこで、詩の連載を始めました。
 ブログと連載小説の相性以上に詩との相性がよいように思いましたので。
 閲覧者にとっても、短時間で読めますし。

 が、せっかくです。そこで私は一冊の詩集になるような世界を築こう。
 そう思い、現在に到るまで長々と連載を続けております。
 ちなみにまだ6、7編掲載しようと思っていますので、しばらくお付き合いください!(目的は、ブログであっても詩集であり、自身の世界観作りにありますので!)

 さて。この度、アメバから残念なお知らせが届きました。

 内容は、アメーバブログでは現在。推理小説の出版化は念頭にはないというお答え。
 そこで司先生は。一時。アメバから離れ、ご自身のブログで(ブログを中心に)、ご自身のお考えを形にしていくことを、ご決意されたそうです。
 ですので。本ブログとの提携は今後も続きますし。
 このブログにレスされることもありますので。
 皆さん、今後ともよろしくお願いします!



薫葉豊輝

お知らせ


2月初めに質問した件についてアメーバブログ運営局から回答をいただく。

すべては掲載しないが、要約すると「アメーバブログの方向性とミステリージャンルは合致しない」ということらしい。


となると私が取るべき道は一つ。
とっとと荷物をまとめてお引っ越し


今後は薫葉さんがいろいろと面白い企画を立てているそうです。今後ともどうぞよろしく!


詩(10)



題「紙上のサーキット」

 このサーキットには、スピード狂が集っている。紙のハンドルを手に、カーブを曲がる。

 激突の韻。
 空には闇。

 視界の悪い路上の上で、アクセルを踏む足を緩めずに走り続ける俺がいる。

 ファースト、セカンド。
 紙時速数百キロの世界。

 次第にゴールが見えた時、この本という名のマシンに乗るレーサーとしての俺のサンバイザーに、横殴りの風が吹き付ける。

 このサーキットには、スピード狂が集っている。

 だから俺の視覚は、今日も又、斜め読みの速度をワン・ピッチだけ上げた……。
 読書家として、反面教師のこの横顔に。速度に傾倒し、大切な読み方を忘れてしまった「悪徳読書家」のこの顔に……。

 今日も風が。

お題!



お題!
テーマ:司徒然日記
薫葉さま

承知しました。毎日の更新はそれだけで大変かと思います。ご苦労様です。

ところで、詩でも短歌でもよいのですが、1つお題を出しましょう。
私も詩や短歌はかなり好き(中学生の頃は詩人になりたいと思ったものです。小説家になりたいとは考えたこともありませんが)で、ミステリーのトリックにもよく使っております。
そこでトリック修行も兼ねまして、こういう言葉遊びはいかがでしょうか?

最初(あるいは最後)の一文字に、「み」「す」「て」「り」「い」の五文字を入れた詩または短歌を作ること。

ちょっと単純ですが、ま、最初ですし……。

もちろん読者の皆さまもご自由にご参加くださいませ。コメントまたはトラックバックでどうぞ。






詩(9)


題「黒き水辺」

 潮風が、あでやかな黒髪を数本さらい、射光の反射と溶け合いつつ、宙へと押し上げては渦を巻き、七色の舞踏をそこへ魅せる、艶っぽい刹那。
 足元のテトラポットの藻の絡みに目をやると、日常を真っ二つに切断するエロスをそこに垣間見てしまうようで、何故だか、くすぐったくなる。
 振り返ると、吾亦紅の弾けた散乱粉が我が目を覆い、戒律に沿って統治されている世界は、やがて反転していく。
 肩に落ちた産毛。粒子となっていく夢の破片。欠伸する猫が僕の前を通り過ぎた時、目の前の海は黒く染まった。
 記憶の中の白い情報系統(ホワイト・ホール)が、その海から押し寄せてくる濁流に飲み込まれ、黒く、黒く染まっていく。
 物理的な情報は皆、破壊され、闇と化す。ブラック・ホールの中で消滅していく記憶。

 ところが、一筋の記憶の流れは消えはしなかった。それは分散しつつ、出口へと向かって急速に流れ、揺れて、流れていく。
 入口の反対側にある出口から出てきた記憶。それが、事前事後から何も変わっていない海岸沿いに立つ自分の立脚点の前にあるトンネルの出口から放出された。しかし、その情報はどこか洗練されていた。
 新しい風をそこに感じさせてくれた。
 だから、この黒いトンネル(ブラック・ホール)の通過儀礼を、記憶の浄化と呼ぶことにしよう。そして、ここを「黒の広場」と。
 もちろん、海の色は蒼く、波はとても穏やかで落ち着いている……平易な日常の、とある午後に。

「二つの推理」感想

tsuzukerublogさま

 「Toki's Mystery Blog」管理人の薫葉豊輝です。
 「第3回ブログ・ミステリー賞」に関するコメント。ありがとうございます!

>ブログ上で連載していた推理小説が完成しましたので~原稿用紙換算で40枚ほどの短編です。応募云々より、どちからというとここら辺を直せばよくなるなどといった~

 応募は検討中だそうですが。「二つの推理」拝見しましたので、感想を述べさせてもらいますね!
 まず、描写とか、文章面に関すると、好感を持ちました。雰囲気を含め、世界観など、小説としてムーディーな部類に入る小説ではないでしょうか?何より文体に「翻訳ミステリ」の匂いがする点など、雰囲気に関しますと、高く評価できる作品。私はそう思うのですよ!
(ただ、小説の体裁。一字下げをしていなかったり、改行の多さなど、今後、学ぶ事も多々あるとは思いますが)

 そして、構成もさほど悪くなく、まとまっていると思います。
 が、最大の欠点が存在しています。失礼ですが「suzukerublog」さんは、本格ミステリを読まれる機会が少ないか、(ミステリの)体裁を消化していないような気がしました?いかがでしょうか?

 読書体験など、また聞かせて下さい。と言うのも現在のミステリは、トリックのサプライズ度や、(新しさまでは出せなくても)意外性を考えることに重点を置いて皆さん、頭をひねっています。となると、「二つの推理」のトリックは、余りにも凡庸すぎるのではないかと思ったのですが?

 「tsuzukerublog」さんは、エラリー・クィーンを、横溝正史を?新本格ミステリの作家達の作品を読まれたことはありますか?
 トリック。ロジックのオリジナリティ。そのサプライズに感激された体験が!
 となると、やはり「二つの推理」の解決編は、オリジナリティが欠落していると感じてしまいました。期待して読んだだけに、残念なのですが。

 いえ、ありがちな手を使う際もありますが。今回のトリックですと、皆が使っている程度の話しではなく、手垢が付きすぎてしまって、今更誰もやらないほどステロ・タイプではないかと、私は思ってしまったのです……。
 それぐらいアリバイ・トリックに挑戦すると言うことは、難しいことだと私は思うのですが。

 そして、論理にも注意深くなるべきかと思います。
 今回、「入国審査」の死角を作中にて扱われていますが、入国審査を甘く見すぎていると思うのですよ。
 確かにこの論理には一理ありますが、審査官の目を潜り抜けることは想像以上に難しいものだと思うのです。いえ、その論理の破たんは、まだ目をつぶりましょう。
 やはり、欠点はメイン・トリックです。
 いえ、(破たんは少ないので)欠点と言うよりは、新しさが無さ過ぎる点。皆がやりすぎて、誰もやらなくなった手を使われたこと。
 私には、それが残念で仕方ないのです……。

 しかし、小説の雰囲気。文体には好感を持ちました。
 今後は、新しいトリックに是非とも挑戦していただきたく思います!

 最後に「それぐらい言うお前はどうなんだ」と反論される弁もあるでしょう。そこで、「アリバイをやるなら最低でも、これぐらいやって欲しい」という視点から、私も一作。近々、アリバイを主としたプロットを「ブログ・ミステリー賞」へと投じることにいたします。

 それを見て、私の言わんとすること。
 例え、前例のあるトリックを扱ったとしても、オリジナリティを出すためには、こういう部分を工夫しなければならないのかなど、その辺を読み取っていただけたらと思います!