BLOG MYSTERY NOVELS -190ページ目

題「パンドラの匣」

右頬を打たれた僕は、シェークスピアの戯曲のように血を舐める。
捨てかけた薔薇と剣とを鏡の間で再び握り、薔薇は匣へ、剣は鞘へ。
手の上の「匣の中の薔薇」 己と戦う己に向かって、深く微笑む。
理の呪をかけた「パンドラの匣」の中へと封じ込めた魔の薔薇。
異界へと向け、現世と魔道を行き来する夜の船へと乗せ、霧中見送る。



「お題!」に挑戦しました。

 上記の詩を、行頭の文字のみ(行頭文字の頭文字のみ)、上からお読みください。
(文字頭を合わせるため、文字サイズを小さくしています)

詩(8)


題「紙の線路」


 僕は、紙の線路の上を走る汽車。
 名前は「薫葉D51」
 石炭の代わりに本を焚き、紙の線路を駆けてゆく。
 重たい車体を引きずって、ロジック駅で停車する。
 そこから見える駅伝に、手を振り、春風心地いい。
 そんな汽車の行き先を、知っているのか、この頬よ、
 余情のニキビ。風に揺る。暗合みたく、
 右頬に。

試みについて



司さま

 今回の提案は試みが大で、その作品を即賞とは考えていません。もっと練った作品も投じようか思案中です。
 ですから今回の提案は、まず第一に。ブログの更新が目的。(ネタを考え、UPする際、やはり連載ものが必要との判断からです。そして自身にとっても、更新の励みにもなりますし!)
 これでも更新に力を入れているつもりですし、そのために色々企画も考えています(今は自分の世界を表現し、本でいえば一冊の世界を構築できるような気で、詩を連載していますが)。
 その点をご理解していただけないかと。

 そして、更新の際、あれこれとUPするよりも、連載もの、それも連載小説をUPすることと、さらにそれをブログ賞に投じるという試みが面白いのではと思ったのですが。
 それがやはり活性化にも繋がると思いますし!


>枚数が足りない、またはオーバーの場合はそれだけではねられるそうですよ。
 存じています。そこで、(新しい)試みと表記したのですが。


>他の応募者からしますと公平ではないかもしれません。
 このご意見は一理ありました。では連載は連載。賞は賞と分けることにいたします。

詩(7)



題「五、五感」


 目を閉じ、耳をふさぎ、匂いだけを頼りに歩く。五秒。
 目を閉じ、耳を澄まし、音だけを頼りに歩いてみる。五秒。
 その時間は、いつもの五秒の何倍にも増幅されたみたいに感じられた。
 あっ、眉に雪。
 目と耳をふさいだせいか、何故かいつもよりも肌までもがフレッシュに新陳代謝していくよう。
 加速する時間達。
 誰よりも早く、ポプラ並木を駈ける僕。誰よりも早く、吹雪いてきた雪の景の中へと紛れてゆく君。
 僕は今日、何か新しい服を見つけられたような一枚の言の葉と出会った。

 それは、僕の体の真ん中に巣食っている青い小鳥を、まるで蓮の葉で包んでくれるようなほどの溶けてゆく光。

 紅葉と高揚が、太陽の光に乱反射しながら、丸まりながら、ときめきながら、いつしか光線と同化しあっていき、白煙の大地へと落下する。

 その瞬間。

 枕言葉っていう名の雪の側へと、七五と言う二つの言の葉が、寄り添うように落下していく。落下していく。

 帰宅したら、そのことをノートへと綴ることにしよう。
 今から開く日記帳の白紙ページは、鍵盤の白鍵。
 五感のドレミを弾きながら、僕の心の中の青い粒子を、一つ残らず発光させてゆく。

 何かを塞いで、何かに気づく。

 そして今日、僕の五感は、五、五感へと進化した。

詩(6)


題「月光」


僕は三日月に沿って、
鋭い月の刃先を舐めた。

野生には まだまだ
僕の知らない言葉がある。

夜にはまだまだ、
僕の本能でさえ入り込めない
何かがある。

そんな夜にはいつになく、
誰も彼もの夜の底で嘆き悲しむ姿が、
狼の遠吠えのように聞こえてくるのだった……。


試みとして、次回連載作品を……


司様
>毎日の更新ご苦労様です。
 いえいえ。それでもなかなかランキングUPできず、自分の非力さを痛感しています。

>私はといえば…年度末恒例の確定申告。昨日から電卓ばかり叩いております。
 当面は詩をUPしますが、また連載小説を掲載いたしますので。ブログの方はお任せ下さい。

 そして、これはお願いなのですが、次回の連載小説は「第三回ブログ・ミステリー賞」に同時エントリーしていただけたらと思います。30枚足らずかもしれませんが。

 そして、その際。プロットを先に発表しますと、読まれる方の楽しみを損なう可能性もありますので、連載の方。先に掲載させてくださいませ。(その後、プロット掲載も考えますので)
 よろしくお願いいたします!

>「Blogで紡ぐ物語」だそうですよ。
 時間のある時に、チェックしてみます。

詩(5)




題「風の又おいで太郎」


 ココロの花粉が放たれて、渦を巻きながら、
 少しずつ、少しずつ遠方まで、足の無い足を延ばす。

 花粉がどこかに落ちた時、その場に秘密を眠らせて、花として、人の心を和ませるアート(トリック)の根を記憶さす。

 風が一吹き、ご挨拶。

 風の又おいで太郎に手を降ってくれる。

 又おいでって、揺ら揺らと。

 そんな風が好きだから、今日もふらふら外へと飛ばす。

 願いを込めて、透明の花粉を。

 風の又おいで太郎の、小さな小さな分身達を。



詩(4)



題「水の幻光」


 絢爛に降下する水辺の音。

 それを受ける蓮の葉。

 その緑器へと落ちし幻光は、
 角度ごとに秘め事を映し、

 時には美のよろめきを、
 時には、はかなさを、
 時には熱情を、
 時には遊悦を、
 時には艶を映しながら、
 化粧の如くその姿を変えていく、
 揺れていく。

 その陰影の隙間に落ちし手は、素直に緑霊を素肌へと受け入れ、
 心の灰汁を篩い落とす。

 汚れた熱量をも身体から祓い、心の純度をフライトさせる。

 高度を上げ、空気と混じる。煙の届かない高さへと。

 髪は乱れ、毛並みは逆立つとも、

「灰汁落としの儀式」は、

 洗いの一滴に、方円の水滴によって次第次第に清められていき、

 人間のOSは、水の流れに添うように、静かに、安らかに組み替えられていく。

 ああ、人は鉄柵によって閉じ込められた血とデータの混血児。

 周囲に張られた見えない鎖にて管理された01の苦労人。

 整理された世界から(過去データを背負ったまま)、この世界へと訪れ、

 過去の始末をこの世で付ける罰を下された「因果データ罪」を背負った罪人。

 しかし、苦しませるばかりが管理者の仕打ちではなく、
 飴とムチは、慈悲として、プログラムの方も正常に作動し続ける。

 ゆえに、時には灰汁を抜き、心清めなければ、やっていられない。

 重いデータが、パソコンを遅くするように、人の身体も悪化していく。

 論理の道筋も、定められていて、レールの上にて過去データを処理していく仕事期。

 それがこの世での労働論理。

 あるいは過酷なる使命なのかもしれない?

 過去、最高のプレゼンをした経験者には、最高の見返りが。
 無為に過ごす者には、無為な時間を。
 破壊を唄う者には、破壊をと、すべてデータの反射として、

 我々は受けているのが、現状においての意味性なのかもしれない?

 そうなると、決められたプログラミングを変えることは、
 ほぼ不可能かもしれない。

 が、美しいプログラミングを自力で探し出し、
 途中からでも軌道修正をすることは可能ではないだろうか?

 そうやることで囚人はいつしか、模範囚としてデータ管理者へと認められ、
 刑期に関しても、恩赦が出るかもしれない。

 この世とは、データの道筋。

 道を壊す者は、その罰を受け、
 道路を、環境を愛し、守り、
 築く者は富んでいく。

 何故なら、その事業の意図には、

 大家族(人類)が再度住める環境の再構築。

 そんな命題が隠されているであろうから。

 ふと、水を受ける蓮の葉を見て、物思う……。



詩(3)



題「砂の一族」

 そこは、古代「蒼い薔薇」の咲く華園だった地。
 今は砂丘となって、枯れた園となってしまったが。

 時に吹く、潮風の波動。砂丘の上を一枚の喪服が浮遊する。

 そう、海の神へ祈りを捧げようと、狛犬の面を被る一陣の葬列が列を乱した瞬間。一人の衣服が宙へと舞った。
 海の呪力にとり憑かれたのか。列の乱れがスイッチとなって、その女は喪服を脱ぎ捨てた。
 まるで、海女の如く、裸となって鎮魂と礼賛の踊りを踊る。

 「美海礼賛」「往生礼賛」「四方大恵」

 翡翠の指輪を嵌めた女は、砂丘の中心にて舞を舞う。

 一葬の影。憑き物の景。
 そんな、白昼の砂丘にて不気味な景色に遭遇した僕は、この手に持つ鎮魂の杖を一振りし、目前に拡がる魔を祓う。

 空気が変わり、流れが歪曲していく。
 すると、女の表情に平常心が戻り、脱ぎ捨てられた喪服を取りに駆けた一人の童子が女の腕へと喪服を通した。

 何でもなかったように歩き始めた葬列。
 風と共に砂丘の彼方へと去ってゆく。

 謎めいた、海に祈りを捧げに訪れた砂の一族は、砂丘の彼方へと去ってゆく。



詩(2)



題「交差路」


 記号の温もり。
 一角獣を抱いて寝る。
 チョコレートの家で、詩を書いていた僕。
 眠らずの森の木の葉をかき集めた葉の面に。
 美と虚無とがにらめっこしあう均衡。
 そして、連想されゆく協奏。
 時間を停めた世界の中で、動かない鳩時計へと話しかける。

 鳩の目覚め。

 もう一つの世界の太陽が東の空へと昇り始める。
 「時間交差点」で、そっちの世界へと駆け足で戻っていく僕。
 転ばないように。閉門時刻までに間に合うように。
 背後で微笑む白い鳩に見守られながら。